アレックス・ガーランドが『シビル・ウォー』で、分裂したアメリカの物語を壮大なスペクタクルで描くことを選んだのに対し、 ショーン・プライス・ウィリアムズは長編初監督作『The Sweet East』で、人間的なスケールの物語と、批判は免れるが皮肉は浴びない、アメリカ人についての奇妙でオフビートなビジョンを描くことを選んだ。陰謀(ピザゲート事件)、空想、偏見(ネオナチ集会)に満ちた土地で、リリアン(タリア・ライダー)の愛らしい目を通して撮影された、LSDなしのバッド・トリップだ。
修学旅行中の少女は家出し、デラウェア州(SPWの故郷)からニューヨークを経由してバーモント州まで、アメリカ東海岸を旅する。その出会いの中で、彼女はアメリカの精神的、社会的、政治的な分断を発見するのだが、その様子はおとぎ話や 『不思議の国のアリス』のバリエーションのように撮影されている。
自由を身にまとったこの女優は、どのシーンでも、驚きに満ち、決して幻滅することのない少女という生き生きとしたキャラクターで輝きを放っている。彼女はフレームの端からはみ出し、人生のすべてを味わおうとする。サフディ兄弟の撮影監督として知られるショーン・プライス・ウィリアムズは、狂気の危機に瀕したこの国を描くことに見事に成功している。そこでは、街に繰り出す若いパンクス、驚くほど敬意と愛情を忘れない感傷的なネオナチ、エレクトロ・ダンスに興じるイスラム主義者たちが混在している。
それは、偽りのナイーブな若いリリアンにとっても、また、驚くべき映像詩を公開する監督の目を通して撮影された、未知で忘れられたアメリカの顔を発見する観客にとっても、 幻覚のようなイニシエーションの旅である。耽美化されたとはいえ準ドキュメンタリー的なヴィジョンと、突然やってくる純粋に笑える瞬間(ローメルのネオナチの腕に抱かれて草の上で昼食)の間を行き来する 『甘い東方』は、ヒロインと同じくらい派手な映画的ジェスチャーである。
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