国際的な名声と知名度を誇り、40年以上のキャリアを持つバンドは少ない。デペッシュ・モードもそのひとつだ。ニュー・ウェイヴを世界に広めたイギリスのバンドであるデペッシュ・モードは、「Music for the Masses」(1987年)、「Violator」(1990年)、「Exciter」(2001年)といった強力なアルバムで、長年にわたって伝説を守り続けてきた。2023年3月、デペッシュ・モードは 故アンドリュー・フレッチャーの死後、デュオとして初めてリリースしたアルバム「Memento Mori」を発表した。
この15作目のアルバムのリリースから2ヵ月も経たないうちに、デイヴ・ギャハンと マーティン・ゴアはヨーロッパでの新しい「Memento Mori」ツアーを開始した。この新しいデペッシュ・モードのワールド・ツアーでは、ステージ・デザインはシンプルだ。メタリカのような中央ステージもなければ、ピンクのようなパイロテクニック効果や見事なアクロバットもない。その代わり、両サイドに大きなスクリーンが2つあり、中央のスクリーンにはいくつかの映像と「Memento Mori tour」にちなんだ巨大な「M」の文字が映し出される、クラシックな大きなステージが用意された。この日のために、デペッシュ・モードの2人の共同創設者は、ドラムの クリスチャン・アイグナー、キーボードとベースのピーター・ゴルデノとともに参加した。
61歳になったデペッシュ・モードのカリスマ的リード・シンガーは、その無限の、感染するようなエネルギー、コントロールされたセクシーな揺れ、そして特徴的なダンスで、相変わらず印象的だ。6月24日(土)、暑さに耐えかねてすぐに脱いだスパンコールのジャケットに身を包んだデイヴ・ギャハンは、常に完璧な音程とコントロールされたバリトン・ヴォイスで注目を集めた。一方、マーティン・ゴアは、どちらかといえば後方に控えていたが、このイギリス人ミュージシャンは、単なるお飾りとはほど遠い存在だった。いくつかのソロ作品を発表しているこのアーティストは、デイヴとの真の共犯関係を示している。特に、崇高な「Wrong」、そして「Waiting for theNight」では、2人の友人であり同僚でもある2人がステージの前方、ファンの近くでユニゾンで歌い、抱き合う。スリルは保証付きだ。マーティン・ゴアは 「Home」と「Soul With Me」でもリードをとったが、2曲でバックステージに戻った彼の相棒ほど簡単にはいかなかった。今日まで デペッシュ・モードを支えているのは、もちろんデイヴ・ギャハンである。正真正銘の野獣であるこのバンドのシンガー兼フロントマンは、ステージ全体を占拠し、 「Wagging Tongue」のように、私たちを彼の素晴らしいメリーゴーランドに乗せてしまうほど、自分の周りを歪んだり回転したりする。
セットリストは、2時間15分のセットを通して デペッシュ・モードの最新曲がいくつか演奏された。Soul withMe」は私たちの背筋を震わせ、パワフルなシングル「Ghosts Again」は私たちを恍惚とさせた。しかし、もちろんデペッシュ・モードにとって大ヒット曲の数々は欠かすことができず、「Walking in My Shoes」、盛り上がる「Everything Counts」、パワフルな 「I Feel You」、見逃せない「Precious」、そしてアンドリュー・フレッチャーへのトリビュートとして演奏された「World in My Eyes」で観客を陶酔の渦に巻き込んだ。セットの終盤はさらにエレクトリックになり、スタンドの観客はヒット曲「Stripped」、 「John the Revelator」、より長くエレクトロなバージョンで演奏された印象的な 「Enjoy the Silence」に合わせて踊り出した。
観客が盛り上がってきたところで、デペッシュ・モードは一旦ステージから離れ、有名なアンコールのために戻ってくる前に一息ついた。アンコールは、3曲の世界的ヒット曲のおかげで、誰もが納得して終わった。有名な80年代のサウンドの「Just Can't Get Enough」、崇高な「Never Let Me Down Again」、そして神話的な 「Personal Jesus」。デイヴ・ギャハンは、体力を回復させるためにドラム・キットの足元に数秒間座り込まずにはいられなかったが、バンドが手を振って別れを告げ、この成功裏に歓喜に包まれたライヴに駆けつけてくれた観客に感謝の意を表して終わったのは幸せなことだった。
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