パリでは新しいレストランの開店競争が止まらないようだが、それは喜ばしいことではなく、最高のコンフィチュールが作られるのは古い鍋の中であることも忘れてはならない。17年前から、地元の労働者と美食家が集うレストラン、レ・フィーヌ・グール。
店内に入ると、握手をしたり、頬をつついたりする習慣がある。オーナーは、入店直後からお客を安心させる術を心得ていると言わざるを得ない。多くの常連客にはお気に入りのテーブルがあり、古風な 亜鉛のカウンターに置かれた小さなグラスに注がれた白ワインを見るのに長く待つ必要はない。
17世紀に建築家ジュール・アルドゥアン・マンサールによって設計されたこの建物は、過ぎ去った時代の証人である。ジンクのバーの背後には、 1947年製の立派な ベルケルのスライサーがあり、手早くランチを済ませるためのハイチェアが置かれ、銃声が響く中でも、感情をぶつけに来た客のおしゃべりにいつも耳を傾けてくれる。
メイン・ダイニングの下と2階には、友人同士のグループに最適な親密な部屋が2つある。LesFines Gueulesを経営する2人のレストラン経営者は友人でもある。一人はアルノー・ブラドール氏で、肉屋の友人ユーゴ・デノワイエ氏の勧めで2006年にビストロを引き継ぎ、もう一人は3年後にこの店に加わったフランク・バルボダン氏だ。一人は美しいスキットルを、もう一人はダイニングルームを担当している。
実際、ワインはこのレストランの目玉のひとつであり、吹き抜けのワインセラーには 2万本近いボトルと1,000の参考文献が辛抱強く待機している。まさにアリババの洞窟で、必需品から珍しいラベルのものまで、ビオディナミ・ワインからフランス全地方のヴィンテージまで、1本たりとも欠かすことなく揃っている。
シェフのニコラ・ゴーダンは、アラン・パサールやラシーヌでの経験を経て、レ・フィーヌ・グールに戻ってきた3人目のシェフだ。ここでは、この手のビストロにありそうな小粋な料理でありながら、古さを感じさせない クラシックなフランス 料理を提供している。 さらに良いのは、季節の フランス産の食材や他の産地の味を使い、最新の味に仕上げていることだ。
ランチタイムには、このエリアでは破格の値段のランチメニュー (前菜/メインディッシュまたはメインディッシュ/デザート23ユーロ、前菜/メインディッシュ/デザート28ユーロ)があり、スレートに書かれたおすすめメニューは日によって入れ替わる。しかし、照り焼きソースを添えた ブッラティーナと仔牛のオーモニエール(18ユーロ)、殻ごと丸ごと提供されるプルプルの クモガニ(37ユーロ)、ビスクとサテのエマルジョン添え、ビストロ風ソースを添えたデザートの モンブラン(12ユーロ)など、必食の一品もある。ブラッサンスの言う通り、この店では腹いっぱいになれる。
Les Fines Gueulesは、フランスの美食が間違いなく世界最高の料理であることを思い出させてくれる。その通りである。